量子とは原子よりも小さい領域!量子コンピューターをわかりやすく解説!

出典:Google Japan Blog

量子力学とは、物質の最小単位を扱う学問です。
物質の最小単位だよ、といわれてもピンとこないですよね。

量子代表としてちょいちょい登場する「電子」という素粒子がいます。
この電子ですが、どのくらいのサイズ感だとおもいますか?

答えは、だいたい100京分の1m程度だそうです。

しかも、

『粒子とも波ともいえるもの』

なのだそうです。

もうたまんないですよね。
ただ、この冒頭からのわけのわからなさには正当な意味があります。
というのはいままでの考え方だと通用しない、のですよ。

わかりやすくいうと、みなさんが知っている物理法則が役に立たないということです。
マジでいろいろぶっとんでます。

わかる範囲で、色々と知識を塗り替えていきましょう。


量子のプロフィール

そもそも量子とは何者なの?
仕事はなんなの?
ということで、プロフィールからいきます。

  • 量子のサイズ感は?
    ►►►原子より小さい世界が量子。
  • 量子の大きさは?
    ►►►~兆分の1mとか、~京分の1m。
  • 量子ってみることできるの?
    ►►►ガンマ顕微鏡でぼんやりと。
  • 量子っていくつあるの?
    ►►►全19種。
  • 量子は粒子なの?波なの?
    ►►►粒子であり波であるといえます。
  • 不確定性原理ってなに?
    ►►►位置かエネルギーのどちらかしか特定できない、という特徴のこと。

原子より小さい領域が量子

原子より小さい世界といわれても。。。ということでサイズ感がわかるように比較してみました。

単位は「m」で統一してあります。

  • 原子:10⁻¹⁰m
    ►►►100憶分の1メートル
  • 原子核:10⁻¹⁴m
    ►►►100兆分の1メートル
  • 陽子:10⁻¹⁵m
    ►►►1000兆分の1メートル
  • 中性子:10⁻¹⁵m
    ►►►1000兆分の1メートル
  • クオーク:10⁻¹⁸m
    ►►►100京分の1メートル
  • 電子:10⁻¹⁸m
    ►►►100京分の1メートル
出典:文部科学省ホームページ

赤く囲っている部分は、量子で扱う領域のものです。

電子とクォークは素粒子ですが、素粒子だけを扱っているというわけではありません。
なので、素粒子を扱うことだけが量子を扱うこと、というわけではないのです。


量子ってみることできるの?

出典:University of Glassgow

上の画像は光子がもつれている状態の写真です。
光子は素粒子なので、量子としてあつかわれます。

とても小さい世界なので道具が必要です。
ヒトの目では認識できない小さい世界を見るための道具に顕微鏡があります。

小学校の授業でつかっていた顕微鏡で「ミドリムシ」とかみたことがあると思うのですが、さらに焦点をしぼって小さい世界に照準をあてないと、原子世界は見ることができません。

より小さい世界をのぞきこむための道具に光学顕微鏡というものがあります。
光学顕微鏡でガンマ線をつかった、ガンマ線顕微鏡で量子世界をみることになるのです。

道具をつかい少しずつ見えていくことで、研究も次へ推し進めることができるのです。


量子って何種類あるの?

量子として扱われているものをまとめました。
全19種類。

昔は陽子と中性子も素粒子としてあつかわれていましたが、陽子と中性子よりも小さい世界があることにきづきました。

陽子は1~6のクオーク、中性子は7~12のレプトンからなっていることがわかり、1~12を素粒子としてあつかい、陽子と中性子は素粒子というあつかいから除外されたものの、量子という分野ではちょいちょい登場してきます。

  • 陽子[1種類]
  • 中性子[1種類]
  • 素粒子[17種類]
    1:アップクォーク
    2:ダウンクォーク
    3:チャームクォーク
    4:ストレンジクォーク
    5:トップクォーク
    6:ボトムクォーク
    7:eニュートリノ
    8:電子
    9:μニュートリノ
    10:ミューオン
    11:πニュートリノ
    12:タウ
    13:グルーオン
    14:wボゾン
    15:zボゾン
    16:光子
    17:ヒッグス粒子

「粒子」であり「波」でもあるものが「量子」

「量子は、粒子だし波だよ~」といわれても。。。というかんじですが、話を発展させるためのベースとなる部分なので、物理学の世界では極めて重要なのです。

物理学の歴史には、

  • 量子は粒子である!
  • 量子は波である!

というように、各々が関わってきた学術の延長線上にふさわしい、学者としての答えがあります。
量子に関わっていた物理学者である、とある3人の言い分はこうです。

アイザック・ニュートン
  • 日中散歩をしていると、太陽光があったって自分の影ができる。もしも太陽光が波ならば、回折現象が起こって、自分の影はもっとぼやけるはず。なので、太陽光は直進するという性質から、波ではなく粒子である。
    ►►► 回折現象[Wiki] ◄◄◄
トマス・ヤング
  • 干渉実験すると、光は波だということがわかったよ。
    ►►► 干渉実験[Wiki] ◄◄◄
アルベルト・アインシュタイン
  • 光は波という性質だけでなく、1つ2つと数えることもできることから粒子である、ともいえる。
    ►►► 光量子仮設[Wiki] ◄◄◄

波なのか?粒子なのか?という議論がずっとおこなわれきて、2022年時点の解釈はというと、

『粒子であり波である』

というスタンスでおちついています。

原子の周りをクルクル飛んでいるイメージあるじゃないですか。
電子とか原子とか聞くと、どうしてもあのイメージを思い出してしまうんですよ。

量子世界ではもっと雲のような広がり方をしているので、ヴェクトルという解釈をしています。

いずれにせよ、今後も研究の成果がアップデートされていくので、一般市民としては『果報は寝て待て』ということですね。


量子の特徴

量子には大きな特徴があります。

位置を特定するとエネルギーが計算できず、エネルギーを計算すると位置が特定でできなくなる、というのです。

具体例です。

犯人が運転している逃走車両を上空からヘリコプターで追跡しているものとします。
この逃走車両を「光子」とみたて、追跡しているヘリコプターを観測者である「あなた」とします。

観測者であるあなたが、逃走車両である光子を発見した瞬間、まさかという事態がおこります。

光子は静止するのです。

静止したので、今後の動き〈データ〉をあつめて、逃走車両の時速が割り出せません。

これが1つ目の特徴である、「位置を特定するとエネルギーが計算できなくなる」ということです。

もう1つです。

観測者であるあなたが逃走車両の動きを計測して、時速が割り出せた瞬間、まさかという事態がおこります。

光子はいなくなるのです。

いなくなるので確認のしようがありません。

これが2つ目の特徴である、「エネルギーを計算すると位置が特定でできなくなる」ということです。

この2つの特徴をまとめたものを、不確定性原理といいます。

カオスすぎです。


古典コンピューターと量子コンピューター

出典:Google Japan Blog〈右〉

古典コンピューターとは、わたしたちが普段から使っているパソコンのことをさします。
トランジスタでデータを0か1のビットで表すコンピューター、ともいえます。

これに対し、量子コンピューターは古典コンピューターのような計算をしません。

0か1で計算するのではなく、0でもあり1でもある状態で計算するのです。
この0でもあり1でもある状態を、物理では重ね合わせとよんでいます。

具体例です。

  • 0+0=0
  • 0+1=1
  • 1+0=1
  • 1+1=2

4つの計算式で、0~2の答えを得ることができました。
これを、古典コンピューターといいます。

  • 0・1+0・1=0~2

1つの計算式で、0~2の答えを得ることができました。
これが、量子コンピューターです。

なんとなくわかりましたか?

ビットではなく量子ビットというものがつかわれていて、量子ビットへの指示を量子プログラミングといいます。

↘ ビットとは? ↙


Googleの量子コンピューター「Sycamore」

出典:Google Japan Blog

Googleが開発した量子コンピューター「Sycamore〈シカモア〉」をつかうと、いろいろな分野で飛躍的にデータを得ることができるようになるそうです。

  • バッテリーの設計
  • 薬のデザイン
  • 肥料生産による排出物の低減
  • セキュリティー開発

►►►大規模な量子コンピュータは現在使われているほとんどの公開鍵暗号を解読し、インターネットなどのデジタル通信を危険にさらすことができるほど強力なものになると予測されます。
出典:Google

量子コンピュータの使い方はどんな感じなのか、気になるところです。
操作は今のところこんな感じなんだそうです。

横に走る線が量子ビットといわれるもので、ビットの数が増えるほど処理能力〈パフォーマンス〉が高くなるそうです。

「H」という箱は、0と1を重ね合わせ状態にするところです。
0という状態を、0であり1でもある重ね合わせ状態にすることを、アダマール変換といいます。

アダマール変換は論理ゲートといわれる半導体でおこなわれ、量子コンピュータとして処理される第一関門です。

「U」という箱はプログラマーによる指示された内容で、量子ゲートといいます。
プログラマーは目的によって、どこの量子ビットにどんな指示をだすのか、というのがしごとです。
プログラミングをして量子ゲートを構築していき、結果を得るというのが大きな流れです。

このようにグラフィックベースで、量子の回路を構築していくのです。
これを、量子回路図といいます。

今回説明したのは量子ゲート方式という計算方法の量子コンピュータです。
他には量子アニーリング方式という計算方法の量子コンピュータもあるそうです。


量子を利用したエネルギー源『ITER』

Wikipedia

『地上に太陽を』

そううたっている国際機関の「ITER〈イーター〉」は、人工的にプラズマという状態をつくる装置です。

現行の科学技術を駆使し、プラズマ状態からエネルギーをつくりだして、世の中に役立てようというのがこの機関の命題です。

原子力発電は読んで字のごとく、原子の力を利用して電気をつくるというものです。
もっと安全かつ効率的にエネルギーをつくりだせないの?という人類の大きな問題をかかえていました。

解決に向けての対抗策として、絶賛建築中の巨大建造物がITERなのです。

International:国際
Thermonuclear:熱核
Experimental:実験
Reacter:炉

電気をつくりだす仕組みはいろいろありますが、社会にとって必要とされるエネルギー量をつくりだして送り届ける手段として、原子力発電があります。

原子力発電の仕組みは、「ふかし芋」とおなじです。

  1. 水を沸騰させると蒸気が発生する
  2. 閉鎖された空間だと破裂するので蒸気をにがす通路をつくる
  3. 通路の途中にファンコイルをおくことによって、蒸気が通過した際ファンコイルが回りだす力を利用して発電させる
  4. 生成された電気の一部は再利用され、余った分は発電所をとおして必要量を街へと供給する

これを理解する限りだと、まさに夢のエネルギー源だとおもいがちです。

しかしながら、人類史上、原子力にからんだ無視できない大きな事故がおこっています。

  • スリーマイル島原発事故
    ►►► Wikipedia ◄◄◄
  • チェルノブイリ原発事故
    ►►► Wikipedia ◄◄◄
  • 福島第一原発事故
    ►►► Wikipedia ◄◄◄

いまから140年ほど前にトーマス・エジソンが白熱電球を開発しました。
『白熱電球に電気を流せば、町はもっと明るくなる』
ということは、それ以前は電気を使った社会ではなかったのですよ。

140年以前は、ガスが基本でした。
ガス管を街に張り巡らして明かりを確保していたのです。

電気にまつわる映画で「エジソンズ・ゲーム」という作品は有名です。
►►► エジソンズ・ゲーム ◄◄◄

ガスで電気を確保できていたのなら、ガス社会でいいのでは?となりがちですが、消費パフォーマンスが全然違うのですよ。
秋葉原や渋谷は夜でも明るい街じゃないですか。
電気で賄っているあの明るさを、ガスで代用とはちょっと考えにくいです。

電気で作り上げた文明社会は電気以外ありえないと。

そのアンサーとして絶賛実験中なのが「ITER」です。

ITERのサイトリンクです。
►►► ITER ◄◄◄

ホリエモンがITERの建設現場をレポートしてました。
►►► You Tube ~堀江貴文 ホリエモン~ ◄◄◄

超でけ~。。。
人類すげ~。。。


量子を扱った作品

量子をあつかっている作品をまとめました。

アニメ

ヨルムンガンド

武器商人のココ・ヘクマティアルが、「戦争がない完璧に統制された世界」をつくりあげようとする近未来SF。
作者の高橋慶太朗さんには、当時から量子の可能性が視えていたのでしょうか?

►►► ヨルムンガンド ◄◄◄


シン・エヴァンゲリオン:||

いわずもがな、みなさんご存じのモンスターアニメ。
物理学者のリツコからは、意味不明な物理用語が乱発されていました。
作品では、碇ゲンドウがのっている13号機が、ゴルゴダオブジェクトにて量子テレポートが頻繁にみられました。
不確定性原理をアニメーションとして可視化している作品って、たまらんです。

►►► シン・エヴァンゲリオン:|| ◄◄◄


映画

2012

SF映画の金字塔である「INDEPENDENCE DAY」でも知られる、ローランド・エメリッヒ監督による作品です。
太陽から生成されるエネルギーがうめきあい、強大なプロミネンスの影響で地球に観測史上最高のニュートリノが降り注いでしまいます。
今までは科学的な反応がなかった地球に、地球全体に量子世界の反応がおこってしまう、近未来SFです。

►►► 2012 ◄◄◄


ムーンフォール

つづいてもローランド・エメリッヒ監督の作品です。
地球外生命体がお月様に穴を掘って、月の重力バランスをくずし、知的生命体が住み着いている地球が狙われてしまうSF映画です。
この作品では、月が地球に近ずくことでおこる、重力波の影響が映像化されているのですが、重力波はグラビトンといわれる重力を媒介する素粒子であるといわれています。

►►► ムーンフォール ◄◄◄


天使と悪魔

ダン・ブラウンのダヴィンチ・コードでも有名な、ロン・ハワード監督の作品です。
インターネットが開発されたCERN〈セルン〉という研究施設に、テロリストが侵入して反物質を盗まれてしまい、宗教における過去の出来事をリンクさせるような謎解き作品です。

►►► 天使と悪魔 ◄◄◄


インター・ステラー

クリストファー・ノーラン監督による作品。
気候などの変動により地球に住み続けることは難しいと判断した一部のブレーンは、物理学・数学・量子力学などを駆使して人が住める環境をみつけてくるというミッションを実行するが。。。

►►► インター・ステラー ◄◄◄


爆発物処理班が遭遇したスピン

量子の特徴をつかったテロリストによる完全犯罪の物語りをえがいた、佐藤究さんの短編集です。
ノーガードで読んだらやけどします。
量子エンタングルメント、マジ?


鏡の中の物理学

どんなに本を読むことが嫌いな人でも、朝永さんの「鏡の中の物理学」なら読み切れるとおもいます。
その理由は、やわらかい文章であることと、飛躍した理解を求めない説明、であるところです。
相手の理解力を尊重している、物理学の入門書です。


量子とはなんだろう

量子に関わる浅い知識から深い知識まで、一般的な解釈ができればだいたい理解できてしまう、パーフェクトガイドブック。
これ一冊があれば、量子関係はほぼ無敵です。